関西のベッドタウンとしての顔を持ちつつ、歴史と自然に彩られた街、兵庫県三田(さんだ)。その北部に位置する永澤寺(ようたくじ)は、釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来の釈迦三尊を本尊とする寺だ。2~3世紀頃、仏像の源流の地といわれるガンダーラ地方で制作された石仏が10数点展示されており、歴史情緒を存分に感じさせてくれる古刹といえる。
ガンダーラ彫刻の他に、永澤寺の名を広く知らしめた存在がある。それが「花」。宗旨宗派の垣根を越えて組織された、花がご縁の寺「関西花の寺25ヵ所霊場」の第11番として名を連ねている。境内には、季節に応じて多種多彩な花が咲く。春に花開くのは水仙、ムスカリ、レンギョウ、あんず、梅、桜、椿、コブシなど。季節感を演出する花と、歴史情緒を醸す寺。もし自宅周辺に、こんな「花の寺」があれば、さぞかし散歩も楽しいだろう。
さらに永澤寺の周辺にも、花が満ちている。門前にあるのは「花しょうぶ園」と「ぼたん園」。花しょうぶは永澤寺建立の600余年前からこの地域に自生していたといわれており、およそ33,000平方メートルの敷地に約300万本の花が咲く。花しょうぶの見頃は例年6月下旬から7月中旬まで。訪れるにはまだ早いが、「ぼたん園」の冬ぼたんは例年2月下旬までが盛り。入れ替わるようにして、例年4月下旬から5月中旬にかけて春のぼたんが咲き、関西では奈良の長谷寺や石光寺に次ぐ品種、株数の多さを誇る。海抜の高さもあるため他の名所よりも見頃が遅いとのことだ。 |