ほたるいかは春が旬。酢味噌和え、沖漬け、刺身など、春の夜の晩酌にはもってこいの肴といえるが、注目すべきは味覚だけではない。海面間際でふわふわと浮遊するその姿も、春の風物詩として知られている。
春、産卵期を迎えたほたるいかは、深海から沿岸に押し寄せてくる。体長4~6センチの小さな体内には無数の発光器があり、その青白い光が夜の海面を照らす姿は幻想的なこと、この上ない。
そんなほたるいかのメッカといえるのが、富山県・滑川(なめりかわ)だ。富山湾に注ぐ常願寺川の河口左岸から、滑川を経て東の魚津港に至る海は、「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物に指定されている。食卓に上るほたるいかそのものは天然記念物ではない。ほたるいかの大群が演出する幻想的な風景が、価値ある財産ということだ。
その地で毎年行なわれているのが、ほたるいか漁の観光。今年は4月12日(土)から5月6日(火)にかけて、滑川漁港から2隻のほたるいか観光船が出る。出船時刻は午前3時頃。静まり返った夜の海を進むと、ぼんやりと青白い光がそこかしこに現れ、やがて漁場に到着。漁は活気に満ち溢れ、ピチピチと跳ねるほたるいかが定置網にかかる。ひとしきり堪能し、再び漁港へ。その際、朝焼けで立山連峰が美しく照らされる姿が見られれば、まさに幸運だ。
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